夏の海
泣くために海に来た。
何にもやる気が起きず、家にも居るのが嫌で、何ヶ月かぶりの運転で海に来ている。
苦しい気持ちと一人でゆっくり向き合おうと思った。
以前大好きだったアパレルの彼氏(すごく好きだった)と別れた時にもここに来た。
車を止めて、彼から貰った手紙を読みながら一人でひとしきり泣いた。
手紙は、ラブラブだった頃に貰ったもので、
「隣でイビキかいて寝てるけど、本当にいつも大好きやでっ!」
みたいな内容だったと思う。
ノートの端をハサミで切ったみたいな簡易的な手紙だったけれど、嬉しすぎて財布の中にしまっていたんだった。
もう半年以上前のことになる。
あの頃の季節は冬で、周りに車は無くて、私は一人でわんわん泣けた。
夏序盤となり、海に泣きに来たけれど、なんでこんなに陽気な音楽がスピーカーから流れているのだろう。
19時30分過ぎ、人が多い。
夏の海は恋人や家族の楽しむ場所となるんだと初めて今日知った。
気分と真逆の景色と音楽の中、どうしたら良いのか分からずに呆然としているのが、私だ。
人の事を好きになりたい。信じたい。と思っている。
ただ 信じる事は難しくて、
「会いたい」「大好き」「信じて」
「愛してる」
何度言われて信じてみても、今日みたいな日が来る。
苦しくて、一人ぼっちな日。
結局、愛されていないのだと知る。
何故か今ちょうど雨が降り出して、車のフロントガラスを濡らしていく。
このまま、砂浜や階段に腰掛けるカップルにももっと降り注げばいいと思う。
早く皆んな帰って、私を泣かせてくれ。
本当は、都合のいい関係で、ちょうどよかったのかも知れない。
愛になんてならなくてもよかったのかも知れない。
「会いたい」と連絡が来ないか待ってしまう自分に嫌気がさす。
電源を切って、ボーッとしたまま、このまま帰ろうと思う。
あともう少しだけ、この陽気な音楽を聴いてから。